アンダー・ザ・ブリッジ(Under the Bridge/Red Hot Chili Peppers/1991)

もしあなたがどこかでこのバンド、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、通称レッチリの名前を聞いて、ちょっとだけ興味をもって試しに3分ぐらいだったら耳を貸してもいいかなと思ったら。
そう思ったなら、 とりあえずこの曲のPVをyoutubeかなんかで再生してみてください。

ほら、聴こえてきたでしょう。どこか物悲しく、それでいて虹色を思わせる音色を持つギターソロが。そしてそのまま一人の男の独白が始まります。その男が囁く様に寂しさとある街への愛を2度繰り返し語ったところで一区切り。あらためて大きなネジを巻きなおすようにベースが入ってきて、それとともにドラムも静かに鼓動を打ち始めます。 終盤まではずっとこの調子。最後のパートに入って一気にコーラスも入り盛り上がっていきます。
この盛り上がりまでがちょうど3分。でもおそらくここまでを聴いていただけたのなら残りの1分30秒もそのまま聴いていただけるのではないかと思います。

レッチリといえばとにかく凄いスピードで暴れまくって飛び回って、汚い言葉が機関銃のように撒き散らされる、そういうイメージもあったでしょうが(まあ特にキャリア初期ではあながち間違いでもないような気もしますが) 、この曲はまったくそれらとかけ離れたところにある、スローで悲しみに満ちたファンクバラードといったところです。
ファンクといったところは、歌詞がやっぱりちょっと普通でないから。タイトルのアンダーザブリッジ、橋の下で何をしているのか。歌のなかでは『血を抜いた』なんて表現されてますが、ようは一発キメてたんですね。

それでまた複雑なことにこの歌詞をヴォーカルのアンソニー・キーディスが書いてたときは実は彼はシラフ=ドラッグを止めていた時期。つまり周りのみんなは曲作りの合間にドラッグやっているのに自分はやっていない時期なんですね。
とくにそれまでバンドの中でのドラッグ依存№1だったのに急にドラッグ止めて『ドラッグをやるなんて格好悪いぜ、ケッ』なんて言ってたもんで、バンド仲間からも煙たがられ孤立状態に陥ってたようです。それでその疎外感と悲しみをこの歌詞の中にありったけ叩き込んでうさを晴らしていた、というのが本音のよう。

そんな裏事情を知ってても知らなくても、何度か聴けばその強いリリシズムにどっぷりと浸かってしまうのがこの曲の凄さ。
あなたがもしも現実になにかに、誰かに、彼らに彼女らに疎外され傷ついているとしたらこの曲を一度誰もいない安心なところで聴いてみるといいでしょう。
どんな時でも裏切らずあなたの傍に寄り添ってくれるcompanion=仲間はいる、すくなくともこの歌はそういう人たちの為の歌、戦友になれる歌です。